国際業界動向

「医療関係者数」

掲載:2007年12月

今、全国で小児科医、産科医の不足が問題となっています。これに対処するため厚生労働省では、産科の収入増を図るような補助制度を導入する一方、全体の医師不足の解消策として大学の医学部定員を285人増員する方向を打ち出しました。日本の医師数は27万371人(04年12月末)で、人口10万人当たり211.7人となっており近年緩やかに増加してきていますが、一部地域、分野での不足感は深刻なようです。それでは他の国との比較ではどうでしょうか。人口1,000人当たりの医師数を国別にみると米国2.4人、ドイツ3.4人、フランス3.4人、英国2.3人などで、これに対して日本は2.0人です(OECDヘルスデータ2006より。厚生労働省の統計では日本は2.1人)。通常、こうした国際比較では経済力や生活水準の要素を反映した対GDP(国内総生産)の数値が用いられますが、GDPが平均以上の国のなかでは日本は最下位、日本より医師数が少ないのは韓国、メキシコ、トルコなど限られた国です。一人当たりの総医療費との比較でも日本の医師の数は少なく、少数の医師が効率よく活動しているといえますが、医師の立場から見れば厳しい医療環境下にあるともいえるでしょう。

日本の医師の数については適正がどの程度か、議論のあるところです。さかのぼってみると、1970年には「昭和60年(1985年)までには人口10万人当たり医師150人とする」方針が打ち出され、達成されますが今度は逆に医師の過剰が問題となって86年には削減の方針に転換します。医学部の定員数でみると85年が8,340人だったのに対して、99年以降は7,700人(多少の変動はあります)となっています。医師数は国内の医学部定員によって決まることから、現在の医師数は20年前からの計画的なものだということが理解できます。しかし医師の数を単なる人口比で決めてよいのかという疑問も提示されています。実は日本の医療費の過半を占めているのが高齢者であり、例えば03年の統計では総医療費約32兆円のうち65歳以上が約16兆円と50.4%を占めています。従って、医師の数は総人口ではなくて高齢者に対する比率でないと実態から遊離してくる可能性があります。日本の高齢者比率は95年は15%未満でしたが2007年には21.5%にまで上昇しています。将来予測では、日本の高齢者は05年2,560万人に対して、10年は2,880万人、15年3,300万人、20年3,560万人(総理府・平成18年「高齢社会白書」) となっています。この増加基調に医学部の定員増は明らかに見合っていません。

先進各国では医師の不足(必要数の変動)に対処する意味からも外国人の採用が増えていますが、日本では看護師の分野で検討が進められている段階で医師はまだまだ先となりそうです。今から養成しなければ10年後に間に合わないのが医療従事者の分野ですから、医師の増加に向けて小手先でない本格論議が求められるところです。一定の医師が確保されないと、地域医療と高度先進医療の両立は困難で、生活の質(QOL)を向上させる先進医療の普及と勤務医の負担軽減からも早急に取り組むべき課題といえるでしょう。