国際業界動向
「―FDG-PET体内放射性診断薬―検査数の違い」
掲載:2006年02月
体内がん診断に画期的なツール
最近、FDG-PETを用いたがん診断が脚光を浴びていますが、FDGとは1975年に米国立ブルックヘブン研究所のWolf氏のもとで井戸達雄先生が初めて合成したもので、ブドウ糖を半減期2時間のフッ素-18で標識した体内放射性診断薬です。がん細胞が正常細胞より3~8倍も多くブドウ糖を摂取する特性を利用し、PET(PositronEmission Tomography:陽電子放射断層撮影法)装置で全身のがん細胞を画像化して診断します。
FDGは半減期が2時間と短いため、サイクロトロンを用いて病院内で製造されていました。2005年7月に医薬品として承認されたことで、デリバリーFDGが可能になり、各病院がサイクロトロンを用いなくてもよくなったことで簡便な検査が可能となり、今後PET施設が一層増えてくると予想されています。
さらに、FDGの機能画像とCTの形態画像の融合を実現したPET-CTによって低投与量でも高画質を得られるようになり、低被曝検査と低侵襲の診断により患者さんの体の負担を軽減して生活の質(QOL)を向上できるようになりました。ちなみに、通常のPET-CTの診断時の被曝量はFDGを注射してPET検査を1回受けると、およそ2.2mSv(ミリシー 間の平均的な被曝線量2.4mSvとほぼ同じ量です。PETとCTを別々に行う重複検査を避け、トータルな医療費の削減などの経済効果も可能にする技術です。
日米FDG-PET検査数の違い
米国メディケアにおけるFDG-PET検査は12万円~18万円で、2005年の米国PET検査数見込みは、がん診断120万件、循環器診断11万件、中枢神経診断6万件の計137万件に上ります。これに対して、日本におけるFDGの保険適用要件は細かく規定されており、PETを使用できる局面がまだ限定的で、件数でも米国のわずか10分の1の約15万件にとどまっています。
日本の保険適用項目は12項目で10項目ががんに関する診断、残りの2項目はてんかんと虚血性疾患です。米国メディケアによるFDG-PETへの保険適用は、2005年までに、非小細胞肺がんの診断と孤立性肺結節の診断、大腸がん再発、食道がん、頭頸部がん、乳がん、甲状腺がん、など相次いで各種のがんへの適用が拡大されてきました。2005年からは、卵巣がん、膵がん、小細胞肺がん等も臨床試験へ登録することで保険償還が認められるようになり、FDGによるがんのPET検査が増加しています。
さらに、2001年からは、心筋バイアビリティの評価、難治性てんかんの焦点検索、2004年にアルツハイマー病と前頭側頭葉変性症(FTD)との鑑別の保険償還も認められ、今後、高齢化によりますます重要となる中枢神経領域での普及も見込まれています。
FDG-PETを用いた際の経済効果
FDG-PETを用いた検査料は7万5千円であり、世界中で最も低額といわれています。日本アイソトープ協会PETワーキンググループの2000年試算によると、大腸がんを対象とした医療経済効果は、日本全体で年間65億6,071万円の節減であり、また患者さん一人当たりでは58万9,299円の節約となるとの報告があり、QOL向上はもとより、医療経済の面からも幅広い活用が期待されています。


