国際業界動向

「胸部手術の負担を軽減―ステントグラフト内挿術」

掲載:2005年06月

短期生活復帰が簡単に

最近では低侵襲医療機器が開発され、世界中の患者の生活の質(QOL)向上に寄与している例が数多く報じられるようになりました。その中から、米国医薬食品局(FDA)が2005年3月23日に承認したTAG胸部人工血管を紹介します。

「ステントグラフト内挿術」は、胸部大動脈瘤の治療をする際に使用する技術です。胸部大動脈瘤は胸部の大動脈が病変し弱くなり“こぶ”(瘤)が生じた状態で、この状態で放置すると大動脈の破裂に到り生命を危険に曝す内出血となります。

表1:置換術と内挿術との比較

大動脈瘤を治療する手術には二つの方法があります。第一の方法は患者の胸部を切開し“こぶ”の部分を切除して人工血管と置き換える「人工血管置換術」、第二の方法は太ももの動脈からカテーテルを入れ、カテーテルを通じて人工血管を“こぶ”の部分に運び、留置する「ステントグラフト内挿術」です。血液の流れを新たなグラフト(人工血管)内に変えることにより下行胸大動脈瘤の破裂を予防します。

グラフトは延伸ポリテトラフロロエチレン(ePTFE :expanded Poly Tetra FluoroEthylene)製でステントはニチノール形状記憶合金でできています。ある企業がFDAに提出した報告などでは(参照 表1 )、置換術と内挿術を比較すると、平均入院日数は7日、通常の生活復帰も約50日、短縮できるとしています。

「日本では病院が独自に手作り」

「日本ではこの治療にかかわる医療費は『ステントグラフト内挿術』として健康保険の適応となっていますので、検査や入院治療費の自己負担は低額で済みます。しかし、機器に関しては、厚生労働省が製造(輸入)承認したステントグラフト機器がないので、各病院において独自に手作りされている状態です。したがって、人工血管の性能や規格については各々の病院によって異なり、その品質や治療成績にも差が出ることは当然でしょう。尚、東京医科大学第2外科(低侵襲治療センター)ではステントグラフトを自作しており、その材料費は文部科学省からの研究補助金を受けています。」※

※東京医科大学第2外科(低侵襲治療センター)ホームページから引用。