先進医療をめぐる声

医療費を削減し、命を救う画像診断

スティーブ・プランケット 氏 GEヘルスケア ジャパン株式会社 事業推進本部長

掲載:2008年10月

スティーブ・プランケット 氏

画像診断機器の台数において、日本は人口比でのCTとMRの保有台数が世界一である、と言われています。しかし 1)有資格放射線医師の慢性的な不足、 2)国内の画像診断装置の50%以上が、シングルスライスCTや最大磁場強度1.5T(テスラ)のMRよりも低性能の装置であるといった統計もあり、必ずしも日本の患者さんが恩恵を受けているとは限りません。また日本の画像診断の診療報酬が他の先進諸国と比べて極端に低いことや、疾患を早期発見するための最も有効な方法として頻繁に用いられるスクリーニング検査が、日本の診療報酬の対象外であることなど、診療報酬制度の整備の面でも遅れがみられます。

これまで数々の研究において先進画像診断技術は、低侵襲、かつ的確な病変の位置や範囲の見極めを可能にし、診断や手術の効率化や入院日数の短縮などによる、医療費削減をもたらすことが明らかとなっています。さらに、的確な初期治療と治療効果の判断を可能にし、正確、かつ低侵襲に病状の経過観察をする助けとなっています。

がんの分野で用いられるPET、CT、MR、SPECTや超音波検査などの画像診断機器は、腫瘍の大きさや部位を特定できるだけでなく、医師が治療の効果を確認し、経過観察をする上で大きく貢献をしています。例えば、がん患者さんへの手術の判断や放射線治療の計画、そして治療の効果を迅速に確認する際には、CTとPETが併用されます。米国ではPET検査を受けた28,000人以上の患者さんのうち、70%以上が体の一部を採取して検査する病理検査を受けずに済んだという研究結果がでています。

心疾患の分野でも、画像診断は医療費の削減に加え、様々な恩恵をもたらしているといえます。ゴールドスタイン氏らによる最近の研究※1によると、米国では一年間に平均約400万人が胸の痛みを訴え、救急救命室へ運ばれており、マルチスライスCTを用いた冠動脈検査により、その内の75%以上が的確な診断を受けています。その結果、診断時間の平均を従来の15時間から3.4時間へと劇的に減らすとともに、医療費を平均で1,872ドルから1,586ドルに削減しています。さらにはCT検査によって、カテーテル治療などの侵襲を伴う治療の検討に必要な情報が得られ、診断治療の効率化がもたらされることで、患者一人当たり平均1,454ドルの費用が削減されています。そしてこの研究を元に厚生労働省は、2008年の診療報酬改定で冠動脈CTへの600点の診療報酬を加算しました。

脳梗塞や血管疾患の分野でも、同様の成果があがっています。最近の英国の研究※2では、脳梗塞に似た症状を訴える全ての患者さんに対して、CTあるいはMR検査を実施することが費用効率の高い診断戦略であるとしています。

このように画像診断によって得られる様々な恩恵に関する研究が欧米諸国で数多く行われていますが、日本の医療システムに合致するデータはほとんどありません。日本でもこの分野における研究を進め、政策決定者、医師、業界関係者、さらには患者さんとの対話を重ねることで、より良い医療体制を構築することが望まれます。

※1 : Goldstein JA( J of Am Coll Cardiol. 2007; 49(8): 863-71.)
※2 : Wardlaw JM et al (Stroke. 2004; 35: 2477-83.)
参考文献 : The US Medical Imaging & Technology Alliance(The Value of Imaging)