先進医療をめぐる声
体外診断用医薬品(IVD)について
池田 勲夫 氏 アボット ジャパン株式会社 代表取締役会長兼社長
掲載:2006年2月
効率性の高い体外診断用医薬品(IVD)
この業界に従事、関与されていない方にとって体外診断用医薬品(以下、IVD)と聞いても馴染みがない方がほとんどかと思います。
今までに健康診断を受けたことはありますか。ニュースの見出しで「高感度DNA測定により犯人逮捕」といった記事をよく目にしませんか。これらにはIVDを利用することにより、客観的に判断する材料が提供されています。
IVDを使用する上で血液、尿、唾液、組織などが利用されます。健康診断の場合、血液・尿を採取して、試薬・分析器を使用して色々な検査を実施することにより、体の状態を推し量ることができます。例えば、アルコールを過度に摂取すると肝臓の状態を示す項目が高くなり、少し控えめにした方が良いということがわかります。こうした分析結果を元に生活改善につなげることができます。事件現場に残された微量の血液をDNA測定することにより特定の遺伝子配列が分析され、容疑者を特定できる場合もあります。これら以外にもIVDは、じつは身近で色々と利用されているのです。
IVDの最大の特徴は、人体に与える影響を最小限に留め医療診断のサポ-トを行うことにあります。対象となる検体を採取後、分析結果がより迅速かつ正確に臨床医を通して患者さんにフィ-ド・バックされます。これにより適切な治療行為、投薬計画が決定されているのです。この医療行為のプロセスには医師、看護師、検査技師が大きく関与しますが、検体採取後は患者さんからは見えにくい検査室、または病院外の委託検査所でその分析が行われています。これは通常、医療行為が患者さんの目の前で行われているのに対して大きく異なる点で、時としてIVDの認知度を上げることに大きな障害を生んでいます。
IVDは試験管1本の採血だけで100項目以上の検査を容易に分析処理することができます。言い換えれば患者さんに肉体的に負荷をかけることなく、また医療従事者の労力に大きく左右されることなく検査・分析を同時に大量処理することが可能です。
また、IVDを有効に使うことで医療費が抑制できる側面も少なくありません。高額医療機器を使った医療診断(MRI、CT)とのすみ分け、予防医学の観点による健康診断への応用など、IVDは安価なコストで大きな効果をもたらしています。
さらなる医療への貢献
一般的にIVDを使った検査は、医師の診察後にその採血と分析が行われ、それぞれの緊急度に応じて検査結果が報告されています。30分後にフィ-ド・バックされなければ意味のないものもありますが、平均的には同日午後・1週間後または、慢性疾患の外来患者の場合には、次回来院時に報告されているのが実情です。どんな疾患であれその時の診療結果を患者さんが知る、直近の検査結果により最適な治療を受けることは患者さんのQOLを改善するだけではなく、医療費抑制の上でも大きく貢献ができるはずです。昨今のIVDの進歩はこの診療前検査を可能にしつつあります。
ただし、この改善は診断薬・機器だけの改善では実現しません。総合的な医療体制の改善や、その改善が促進されるような検査実施料改定が必要となっています。
IVDの技術も日進月歩で進化しています。投薬前に遺伝子の配列を確認してその個人に効果がある薬剤かどうかを確認する「テーラーメイド検査」も少しずつできるようになります。測定する機械が小型化され離れた場所で測定した結果が一瞬にして医師の元に届けられ、治療に生かされる機会も増えてくるでしょう。
IVDの可能性は無限に広がっています。今後も医療を通じて色々な貢献ができるよう我々は、医療業界の枠組みのみならず、広く皆さんにIVDの役割を知っていただくとともに、増加し続ける医療費抑制にも最大限の貢献ができるよう活動を行ってまいります。


