先進医療をめぐる声
日本の医療産業が向かう方向とは
デリック・バドルス 氏 日本ストライカー株式会社 パブリック・アフェアーズ ディレクター
掲載:2005年6月
通常ビジネスは、消費者との需要と供給のバランスで成り立っています。日本の医療産業は、承認、使用方法、市場調査から価格まで行政に規制される、実に稀な業界といえます。このような規制業界は他になく、また、適正な価格を要求することもできません。それ以前に、医療産業は「テクノロジー」という急速に進歩する分野ということを忘れてはなりません。
将来へのイノベーションが失敗した際に害を被るのは、人類の進歩
私たちは、日本の医療政策に影響を及ぼす人々に医療機器産業の有り様をお伝えし、理解していただくために啓発活動を行い、その一環としてニュースレターを発行しています。政府や世論形成に携わる人々は、先進医療技術を必要とする患者のQOLの向上を考える必要がありますが、同時に日本の医療産業を支える役割もあります。新しいテクノロジーを開発し、社会にもたらすのは競争力のある企業で、将来へのイノベーションが失敗した際に害を被るのは「人類の進歩」なのです。
新しいテクノロジーの出現をはばむ市場要素は、高くつく費用、必要以上の規制です。保険償還の水準は急激に下落し、10年間、継続的に価格が落ち続けるものもあるのが実態です。驚くべき事実は、日本特有の複雑な流通環境、どの国よりも質を求める日本の消費者の要求に答えるために必要なコストが考慮されなくなったことです。保険償還されるものの中には、アメリカの価格と同等、あるいは、それ以下のものがあるのが現状で、これでは患者にとって最高の治療を開発し、提供するのは困難といえます。
皮肉なことにこの環境に一番苦しむのは日本のベンチャー企業で、様々な規制のある日本ではグローバルな競争力を育てることは難しく、海外市場―承認が容易で流通環境が整備され、先進医療に高い価格がつく市場―を開拓することは困難です。規制増大、保険償還の下落という二重苦は、日本の国内産業を根絶してしまう危険さえあります。
日本の医療機器産業が花開く機会を
日本の先進医療機器企業の数の少なさは、外国の立場からすると衝撃的に映ります。「無数の精密な新製品や技術の開発を得意とする工場に支えられる産業構造」。これが、外国人が考える日本産業の姿で、日本が得意とする、高品質な製品、材料、継続的なスキルの改善、優秀な医師こそ、業界が成長するのに必要な要素だからです。これが事実と反するということは、日本の患者、日本の医療にとって非常に残念です。
私は、日本の医療産業が花開く機会が与えられることを願ってやみません。そして、これからも私たちは先進医療技術の持つ価値を皆さんに伝えるために、啓発活動を行っていきます。


